三日前、外務省から一人の女性外交官が、私の通う高校にやってきて、「国際理解講話」というものを行ったのですが、その人の発言は私にとって大変耐え難いものでした。以下、要旨をまとめます。
 @経歴
 私はベトナム担当の外交官で、二年ほどホーチミンにいた。前小泉総理が、2003年にベトナム首相と会談した際に、通訳を務めたのも私である。そのとき、小泉氏が話す原稿を作成したのも私だ。そこで、私はベトナムに日本の企業が参入しやすい経済環境を作り上げてくれるよう要請し、見事ベトナム・日本間の経済協力協定を締結することに成功した。
 A日本の国益
 ベトナムは社会主義国家であり、現在の北朝鮮の口座が大量に存在しているなど、北朝鮮と関係が深い。そこで、ベトナムと仲良くすることで、北朝鮮へのプレッシャーになる。
 また、ベトナムはASEANの一員であるが、後発加盟国である。何故そのような国と仲良くするか。それは日本のASEANやAPECにおける地位をよりよいものにするためだ。そもそも外交とは各国が自国の「国益」をぶつけ合って妥協するものである。だから、ベトナムとの関係に置いて、日本の「国益」が損なわれてはならないのだ。(要するに、日本は外交上ベトナムを利用するという考えである)前に述べた協定も、最終的には経済大国である日本にとって有利な協定だ。有利にならないような関係を築くはずがない!
 また、外国人の友人を持つことはあなたにとって大いなる力となる。日本が会議で発言する時、協賛してくれる国は一つでも多い方が良い。だから、周辺国と仲良くするのだ。同じことは、個人レヴェルの友人にも言える。
 B国際理解との兼ね合い
 国際理解とは、自国の国益を優先することだ。 いくら外国に住んで、外国人に情が移ったとしても、その関係においてあなたの帰属する「日本」の「国益」が損なわれることはあってはならない。あくまでも日本人であることを意識して世界市民として生き、日本を主張し、外国を客観的に見て、行動することが国際理解の本旨だ。
 繰り返すが、国際理解において「国益」は最優先だ。

 これに対して、私はこう思います。確かに、外交とはお互いが腹の内を隠し合って妥協するものだという考えには賛成です。それは誰もが分かっていることです。外国との接触で日本が不利益を被ったらおかしいですから。しかし、それはあくまでも「腹の内」であって、一外交官がべらべら喋ることではないと思います。戦時中に、何度も演説で「国益」という言葉を好んで使用した外交官がいたようですが(名前は忘れてしまいましたが)、その結果何が起こったかと言えば、最終的には日本各地への空襲や沖縄戦、そして広島・長崎への原爆投下です。歴史は語っています。「腹の内」を口に出すのはタブーだと。口は災いの元とはよく言ったものです。きちんと日本史を勉強して欲しいですね。
 まず私はこの「あからさまさ」に大きくヒいたのですが、それ以上に信じられなかったのは、「外交」と「国際理解」を同一視した点です。 本当に友人とはそういうものなのか?友人とは、利害のみで判断する存在なのか?自分にとって利益のない人間と付き合う必要はありませんが、常に自分だけに利益があるように他人と付き合うことなど出来ません。そんなことをすれば、周りからどんどん浮いていくだけです。何度も「友人」と繰り返す彼女は、「友人=自分に利益をもたらす人」という誤った認識をした悲しい人間であると思います。ドイツ観念論の創始者であるカントはその昔、「汝の人格や他のあらゆる人の人格のうちにある人間性を、いつも同時に目的として扱い、決して単に手段としてのみ扱わないように行為せよ」と名言を残しました。これまた少し哲学を勉強して欲しいものです。先人の言葉を参考に出来ない人間が、どうして現代の問題に対処できるというのでしょうか?
  外交官はスピーカーに同じく、本人の意志などその肉体上には全く存在しません。すなわち、彼女があの日語ったことは全て、外務省、ひいては日本国政府のスタンスなのです!日本国は、アジア外交を列強外交のための道具にしか捉えていないのでしょうね。
 私は、あの講話を聞いて、日本政府に益々不信感を強くしました。朝日新聞などでも「右翼政府」などと揶揄されている安倍政権ですが、あの話を聞く限り本当に今の日本の政府は「日本万歳政府」なのだと感じました。その下っ端が日本の公立高校(しかも地方)までやってきて、何を話すかと思えば、外務省の現状の宣伝と日本政府の政策の肯定。「末法の世」なんて言葉がありますが、それは今を指しているのでは?
 これからも目が離せない、日本の行く末は。

inserted by FC2 system