「橋本紡渾身の新作」(2006.4.16)

橋本紡『流れ星が消えないうちに』読了。
橋本先生曰く『半月を別の角度から書いたような本です』。確かにその通り。
設定として少し異なるのが、主人公の恋人がもう死んでいると言うこと。いつ来るか分からない里香の死と向き合って生きていく裕一と、もう死んでしまった恋人のことを永遠に記憶にとどめながら、新たな恋人と新たな生活を送る本作の主人公。いつかは裕一もこうなってしまうのかな、と読んでいて少し悲しくなりました。
美しすぎる表現も見事。単純で露骨なセックス描写をあそこまで『聖』なるものとして、書き表せる橋本先生の文才に感服。
人間は誰でも忘れたい過去を持っている。しかし、それはずっと忘れずに生きていかなければならない。過去を忘れるだけでは、前へは進めない。過去を自分の中に取り込んで、新たな道を探せば、自ずから道は開かれる。
そんな普遍性を持ったメッセージが伝わってきます。
超おもしろい!とか、これは最高傑作だ!と叫ぶ作品ではありません。しかし、この作品全体を覆う悲哀、苦痛といったものは素直に誰もが共感できるものであると思います。
ライトノベルレーベル出身の橋本先生が、新潮社という一般レーベルから出した本作。老若男女を感動させられる作家が、電撃文庫で活躍しているのは嬉しい限りです。『ライトノベルに限界を感じた』と橋本先生はインタビューで語っておられますが、私は、そのうちライトノベルからもさらに感動を呼ぶ作品が登場すると信じています。いずれ・・・ね。

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