「ラグナロク」(2006.5.28)

初めに断っておきますが、今回はラグナロクオンラインの記事ではありません。あしからず。
今回紹介するのは、『ラグナロク』。スニーカー文庫で1997年から発売されている古参のライトノベルです。主人公の傭兵、リロイ・シュヴァルツァーとその相棒、ラグナロクが《闇の種族》や悪人たちをバッサバッサと斬り捨てていく痛快剣豪小説です。
なんだそれだけか、と思った方は、ここで止めずに最期まで読んでください。どうしてそんな古いシリーズが今も人気なのか?その理由は、ただのバトル小説ではないからです。
このシリーズに出会ったのは僕が中一の時でした。今思えばこれが一番最初に読んだ『ラノベ』だったのですね・・・。まず惹かれたのは、パワフルな文体です。戦闘の緊張感がひしひしと伝わってきます。さらに、この小説は、パワーだけでなく、スピード、テクニック、そしてギャグも要素として含んでいます。ベタな展開アリ、先の読めないところアリ。決して単調な作品ではありません。
そして、これがこの作品を語る上での最大のポイントなのですが、作品全体を貫く悲哀です。主人公のリロイは、なぜか分かりませんが、人間ではあり得ない恐ろしい身体能力を持ち合わせています。その能力は時々暴走し、リロイを異形の姿へと変えてしまうのです。《闇の種族》にお前は化け物だ、と念を押されるたび自分が人間であることを確かめずにはいられないリロイ。そしてそれを支えるラグナロク。
シリーズが進むたび、様々な人物と出会い成長していく、リロイの生きることにひたすら前向きな姿が胸を打ちます。
ハード・アクションとセンチメンタルの融合、これをコラボレーションと呼ぶか、それともギャップと呼ぶかは人によると思いますが、僕は迷いなくコラボレーションの方を選択します。『戯言』シリーズのキャラクターたちの悲哀は、明確な対象が存在します。一見ないように見えても、それは『漠然』という対象が裏に隠れているだけなのです。それに対し、『ラグナロク』のキャラクターたちの悲哀は、やり場のないものです。どうして自分が今このようなひどい状況に置かれているか分からない、しかしそれは受け入れるしかない真実であるということは気づいている・・・。巨大な正義を求めつつも、周囲の憐憫の情を拒絶するリロイの姿勢は、パンク・ロックミュージシャンの姿勢に酷似しているのではないでしょうか。
ライトノベル市場が拡大している昨今。毎月供給される新作ばかりに目がいっていませんか?今の作品もいいですが、昔の作品(モダンクラシックス)にも素晴らしい作品が数多く存在することを、忘れないで欲しいと思います。

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