「短編歴史読み物!」(2006.10.22)

朝日新聞日曜版で毎週特集を組んでおられる、ササキバラ・ゴウ氏の『<美少女>の現代史』を読み終えました。

本書は、七〇年代前半から現代までの、アニメ・漫画・ゲーム作品を数多く取り上げて考察し、現代の萌えブームが如何にして生まれたかを浮彫りにしようとしたものです。分かり易い作品で言えば、タッチ、うる星やつら、ルパン三世、ガンダム、キューティーハニーなどを、その作品が流行した時代の背景を考え、文化史上における歴史的意義をそれぞれ与えています。
まず、本書によれば、<美少女>の歴史とは、『男性』の精神的課程に他ならないそうであります。七〇年代初頭に起こった美少女ムーブメントは、男性がただ自分の『エッチ』な欲望を、作品内の少女キャラクターで消費するだけでした。しかし、時代が経つにつれ、その『美少女』であることは深い意味を持ってきます。当時大流行した『あしたのジョー』『巨人の星』は、最後主人公がボロボロになって、自分の最も大切なものを、自分の愛する女性にあげて力尽きてフェードアウトするという点で共通しています。つまり、自分が戦う理由として最後の最後に残ったのは、女性だったということになります。視線を女性に動かしたことで、女性は男性にとってなくてはならない存在として描かれるようになり、後に女性は自分を『男性を籠絡できる』存在と認識するに至ります。
男性は、漫画などの中で自分の欲望を満たしますが、そのための行為を現実の女性に行えば、間違いなく嫌がられます。『いや〜ん』なんて台詞を吐く人間は現実には存在し得ないわけです。実際、女性は傷つきやすい存在の象徴として捉えられており、それは漫画の中でも同様です。さてここで、女性が自分の『弱さ』を自覚したら?その『弱さ』を振りかざすことで男性が手を出せなくなると気づいたならば、どうなるでしょうか。このあたりの詳しい説明は、是非本書を読んでもらいたいのですが、『戦う美少女』にその結果の全てが凝縮されていると言っても過言ではないでしょう。
さらにその後、PCゲームというメディアの発達によって、『選択肢』という新たな文化が誕生します。これまでの漫画・アニメは我々は受動的に只作品を受け取ることしかできませんでしたが、『選択肢』によって、自分の選んだ行動がゲーム内の『彼女』の感情その他に、直接影響するようになったのです。すなわち、我々は常に『彼女』の気分を害さないように、バッドエンドへ進まないように考慮しながら『選択』します。女性の感情の責任が自分にあるとここで男性はようやく分かるわけです。近年は随分退行の感が否めませんが、エロゲーも『彼女』といい関係を気づいて初めてエロシーンに移行できるようになってきました(しかしながら、今だ鬼畜物が根強い人気を誇っているのも事実ですが)。『CLANNAD』から始まった『泣きゲー』も、『夜明け前より瑠璃色な』によって完全にエロゲーへの移行が始まったと私は見ています。感動が、求められるようになってきたのでしょうか・・・。
以上を総合して、最後に私はこう言いたいと思います。

日本の文化の歴史です。必読!

本書は、戦後日本の文化史の教科書です。体系的に『萌え』なる物を理解するのに最適です。しかし、あくまでも本書は教科書です。これを基にして、自分で近年、『オタク文化』、『一般文化』と呼ばれる物の違いについて、成立からちょっと考えてみるのもいいかもしれません。
そうすれば、気付くでしょう。前述の二つの間に、大きなイデオロギー対立など存在しないことに。『オタクは、気持ち悪い』と思いこんでいる方にこそ呼んでいただきたい本だな、と思いました。

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