「五段階評価の限界を感じた僕の魂の叫び、第一夜」(2006.3.24)

人間は受けた感銘を完璧かつ正確に言葉で表すことは出来ません。
しかし、表さなければ誰も理解できません。
だからこそ、僕はこうして書き続けるわけですが、それでもどうやってもうまく表現できない壁が存在するとしたら?
その壁を実感したのが、『クビキリサイクル』。初めにこの本を店頭で見かけたときの僕の第一印象は、『変な本』『気持ち悪い本』。
その奇抜なタイトルとエキセントリックな表紙、そして高価な値段が、まるで猛毒を持つ昆虫が鮮やかな色を持つように、ぎらぎらと輝いて、僕に危険信号を送っているように見えました。
そんな僕の考えを変えるきっかけになったのは、『このライトノベルがすごい2006』でした。厳密に言えば『クビキリサイクル』はライトノベルではありません。しかし、この本の紹介文、推薦文を眺めているうちに、「よし、毒を食してみるか」という気になりました。
書店で現物を再び見て、その毒々しいイメージがさらに強くなりました。僕は覚悟を決め、それをレジに持っていきました。おとといのことです。

前置きが長くなりました。結論から言って、

へたくそ危険信号を発するモノに触れるな。

読んでここまで衝撃を受けた小説は正直言って初めてです。五つ星は五つ星でも、ツボにくるラブコメだとか、感動の新世代ラノベとは、本質的に異なるのです。うまく言えませんが。
西尾維新先生のデビュー作には、驚くべき猛毒が潜んでいました。もうすでに死んでいる僕を、何度も殺すのです。このショックは、読んだ人でないと分からないのかもしれませんが。
帯で過度に宣伝する本は良くあります。しかし、この『クビキリサイクル』、『戯言』シリーズの宣伝には、文句はありません。
斜め読みを開始一ページ目から禁止する圧倒的文章力。展開にのたうち回る僕を、遥か高いところから見下ろし、嘲笑するかのような言葉の奔流。
すべてが、僕にとって新しい体験でした。

非常に抽象的な表現が多すぎて、理解できない部分も多々あると思います。しかし、これは僕だけの責任ではありません。『戯言』は一日ではとても語り切れません。
というわけで、明日に続きます。

「一晩眠りますます頭が冴えた僕の魂の狂想曲、第二夜」(2006.3.25)

タイトルに第二夜とか書いておきながら日中にタイプしている、Rasielです。
それでは、行きます。

『戯言』シリーズは人に勧めない方がいいです。この面白さは、自分で気づかなければならず、何よりも好き嫌いがハッキリしていると思うので。
公式本の中で西尾先生は『ジョジョの奇妙な冒険』の荒木飛呂彦先生と対談してらっしゃいます。『ジョジョ』は濃い絵面、濃いキャラクター、熱いセリフ、そして計算し尽くされたストーリーが魅力ですが、『戯言』はそれがすべて文字になった・・・否、『ジョジョ』と『戯言』は全く異なる世界観ですが、何か共通するところがあります。
共通点は、先がいつまでたっても全くと言っていいほど読めないこと。よく、ミステリーマニアで、犯人を勘で当てようとする人がいますが、そんな人でもこの話のエンドは予想不可能です。(まぁ、予想できる人もいるかもしれませんが

あらすじを少々。
赤神財閥令嬢に、孤島『鴉の濡れ羽』に招待された五人の天才とその付添人。そこで起きる首切り殺人。語り部、ぼくこといーちゃんと天才技術屋玖渚友(くなぎさとも)はこの事件を解決できるのか?

まずは上記の五人の天才が魅力。天才画家、占術師、技術屋、学者、そして料理人。それぞれ自らの世界を構築している『天才』の彼女らですが、西尾先生はそれに頼りませんでした。最後まで。
天才から見たら『凡人』のいーちゃんが中心となって物語は加速していく。そして、事件は解決するのですが・・・?エピローグまで見逃せません。
僕が通っていた塾の数学講師の言葉にこのようなものがありました。
「ヒントを使い切れ」
よく、無駄に伏線を張りすぎて自分で自分の首を絞めている作家がいます。しかし、この話、伏線の回収率100%!
つまり、読者が真実に到達するには、話中の『ヒント』を全て使い切らないといけない・・・。

僕にとっては、セリフが最大の魅力。
「上には上があるが頂点には下しかない」「君の意見は完全に間違っているという点に目を瞑れば概ね正解だ」などなど、型破りで、しかも納得できるセリフが満載。

最後に、西尾先生の言葉で幕を下ろします。
人に優しく慈悲深く、優秀で有能で万能で、そして何より魅力的。その上で天才だなんて人間は会ったことがありません。もしいらっしゃるようでしたら、首を洗って待ってます。

追記:3.25.20.21
ヘボい探偵小説の作者がよくやること
→犯人を伏線全く関係なしの新しい登場人物にする
西尾作品は、まったくそんなことはありませんでした。完全なるフェア・プレイ!
感服です。その読者を裏切らない姿勢に敬意を表すッ!
また、この作品主人公と一名以外全員登場人物が女性!しかし

萌えゼロ


コラッ!そこのノーモエノーライフとか言ってる詩人!そんなあなたは是非ご一読のほど。戦慄ですよ。美は一瞬凍り付かせてくれないと美じゃありませんからね。
ここまで萌えを意識しないで素直に楽しませてくれる『クビキリサイクル』。やはりこれは真のエンターテインメントだッ!

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